今回は、東野圭吾の「幻夜」を読みました。
全700頁のハードカバーで、持ち運びは大変でしたが、続きが気になって、スラスラとページがめくれました。
東野圭吾の「幻夜」は、「白夜行」の姉妹作として2004年に出版されました。
読者の間では、幻夜が白夜行の続編なのではないかということも噂されている作品です。
今回は、「幻夜」のあらすじや登場人物、「白夜行」との繋がりについて紹介します。
この記事はこんな人におすすめ
・幻夜がどんな作品か知りたい人
・読み終えて余韻に浸りたい人
・幻夜の面白さを共有したい
あらすじ
おまえは俺を殺した。俺の魂を殺した――
1995年、阪神淡路大震災。その混乱のまっただ中で、衝動的に殺人を犯してしまった男。それを目撃していた女。二人は手を組み、東京に出ていく。女は、野心を実現するためには手段を選ばない。男は、女を深く愛するがゆえに、彼女の指示のまま、悪事に手を染めていく。やがて成功を極めた女の、思いもかけない真の姿が浮かびあがってくる。彼女はいったい何者なのか――謎が謎を呼び、伏線に伏線が絡む。(amazonより引用)
登場人物
水原雅也
阪神淡路大震災で被災。水原工務店の息子で、腕の良い職人でもある。被災したときに出会った新海美冬を愛し、彼女のためなら悪事も行う。
新海美冬
見た者誰もを魅了する容姿の持ち主。被災した時に雅也に出会う。過去は闇につつまれており、触れようとした者は何かしらの不運に会う。項にほくろが2つある。
加藤亘
警視庁の刑事。とても鼻がきく。ある事件をきっかけに美冬に目をつけ、過去を暴こうとする。
面白かったところ
様々な視点での描写
この小説では、さまざまな人物の視点が描かれています。
一見全く関係なさそうな人が、思いもよらぬところでつながっていて、それが分かったときには背中がゾクッとするような面白さがありました。
美冬の計算高さ
新海美冬はとても計算高い人物です。
就職先の社長と近づくためには手段をいとわず、さまざまな人物の人生を狂わせていきます。
特に、彼女の過去に触れた人物は徹底的につぶしにかかります。
どの手口も、とても計算されたもので、警察も簡単に騙せてしまいます。
といっても、最終的に手を下すのは彼女ではありません。
計画は彼女が全てやりますが、最終的な汚い仕事は全部雅也にやらすのです。
時には、計画がおぞましすぎて雅也が躊躇しそうになりますが、その時は雅也を騙してまでも悪事をそそのかします。
騙される雅也も雅也だとも思いますが、彼女に秘密を握られている以上仕方なかったのかもしれませんね。
時代を彷彿させる描写
幻夜は、1990年代後半を舞台にしています。
そのころといえば、日本ではバブルが弾け、経済が低迷している時期です。
小説内でも、雅也の実家である工務店の負債や、就職先の工場の倒産など不景気を彷彿させるような描写が多数ありました。
またそのような不況もどこ吹く風と言わんばかりに、成功していく美冬のコントラストも面白かったです。
白夜行との繋がり
幻夜は、同著者の名作「白夜行」の姉妹作として出版されています。
そして、著者が直接言っているわけではないのですが、幻夜は白夜行の続編なのではないかということが言われています。
どのように続いているかというと、美冬が、白夜行にでてくる唐沢雪穂なのではないかということです。
以下では、僕なりにこのことを検証したいと思います。
このことに関してはとても迷うところですが、正直にいうと、同一人物30%、違う人物70%といったところです。
美冬(偽物)が雪穂と思う理由、思わない理由をまとめました。
同じだと思う理由
・年齢が近い(30代半ば)
・容姿の描写
・勘のいい刑事をしっている(笹垣か?)
・上昇志向
違うと思う理由
・関西弁を普通にしゃべる
・(雪穂と比べて)冷徹すぎる
・(美冬と)すり替わる理由がない
美冬(偽物)と雪穂は、容姿の美しさや、「アーモンド型」と描写されている彼女の目や年齢、上昇志向といった人間性で共通することがあります。
また、勘の優れる刑事についての知識があり、彼女がそれを知ったのは、白夜行で出てきた笹垣のことではないかということです。
その一方で、美冬には、雪穂と同一とは言い難いようなところもあります。
例えば、雪穂が嫌っていた関西弁を、美冬は普通に喋っていることが挙げられます。
また、雪穂は美冬ほど冷徹だったかなとも思います。
それから、新海美冬と入れ替わる理由がいまいちよく見当たりません。
雪穂は、唐沢雪穂として成功を収めていましたし、入れ替わってまで隠したいような過去も無かったのではないでしょうか。
以上のことから、僕は唐沢雪穂と新海美冬が同一人物であるということは、ちょっと考えにくいかなと思いました。
口コミ
作品自体の評価というのは「さすが東野圭吾」というようなものが多かったです。
ただ、内容に関しては、暗かったり、はっきりしないところがあったりすることもあり、読後感の悪さを感じる人も少なくないようです。
また、美冬に騙されていく人々に感情移入し、「アンチ美冬」になる人達も一定数いるようです笑。
まとめ
今回は、東野圭吾「幻夜」について紹介しました。
幻夜単体でも、多くの伏線が絡んでおもしろい作品でしたが、あらかじめ白夜行を読んでおくと数十倍も面白いと思います。
美冬=雪穂の議論は、答えがないので結論は出ていませんが、いろいろな解釈ができるからこその面白さがあるように感じました。
もし両方を読んで、自分なりの考えが出来上がったら、ぜひ教えてください!